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「HIV」なんて人ごとさっ! さすがに今どき、そんな風に考える人も少なくなっているとは思うけど、「HIV」についてキチンと理解できているのかな? そして予防するためにどうすればいいのか、本当に分かってるのかな? このコーナーでは、「HIV」の実態を知り、予防していくための方法を考える。
文・溝口哲也
1976年生、現在29才。
昔は性感染症の勉強会やレズビアン&ゲイ映画祭のスタッフでしたが、今ではただの社会人です。HIV関係ではもはやただの素人同然ですが、そのぶん初心に戻ってがんばりたいと思います。

PART1:僕らのとなりの「HIV」
〜今さら聞けない素朴な疑問に答えます!〜

第23回
今さらですが、聞きたいことにまとめてお答えします。

イラスト/タカサキケイイチ

Q「HIV感染の方とお話出来たのですが、その方は即日検査では陰性と出たそうです。しかし少ししたら熱が出て咳も出てきたから風邪だと思って普通に医者で身体検査を受けたら陽性とわかったと話していました。このように即日検査もあまりあてにならないような話を聞いたので、正しい意見をお聞きしたいです。」

即日検査はウィンドウピリオド(検査でHIV感染がわからない期間)を過ぎていたのでしょうか? 検査の時期が感染から比較的近ければ、結果が陰性から陽性に移ることもありえますから、僕からはなんとも言えませんねー…。質問者さんの受けた即日検査はどのようなものかわかりませんが、保健所でのHIV即日検査だったら信頼して大丈夫だと思いますよ。保健所にはHIV検査の統一されたガイドラインがありますし、教育されたスタッフが対応してくれます。逆に自宅で即日検査をおこなうHIV検査キットなどでは自分で正しく検査をおこなえない可能性も否定できないので、どうしても確実な結果を知りたいときは保健所をおすすめします。
Q「他誌で『口内発射されるのは危険であり、精液を飲んでしまった場合、危険度はグンとアップします』とありました。これについて東京都エイズ電話相談に問い合わせると、『精液を飲んだ場合、胃液でウイルスが死滅する』と言われました。ザーメン飲みのリスクについてどのように考えたらよいのでしょうか?」

実際に自分でこの電話相談へ電話して確認を取ってみたのですが、先方の回答では「確かに胃の中ではHIVウイルスがが死ぬと思われるが、食道等に付着したウイルスは胃液で殺すことが出来ないので、感染する危険性があることには変わりない」ということでした。質問者さんの時の回答とは微妙に内容が違いますけど、実際の会話を聞いていないのでこれも自分にはなんとも言えません…。もし電話相談の回答でどうしても気になることがあれば、そのやり取りをメモっておいて、後日改めて電話してみてはどうでしょう。
Q「HIV感染者と生でやって感染する確率は0.1%で、生フェラでの場合はそれ以下になると某サイトで読んだ記憶があるのですが、本当ですか? 逆に生フェラでも感染する確率は十二分にあると書いてあるサイトもあり、指摘が矛盾してると思うので‥。」

生フェラとは一言で言っても、軽く咥えるだけとか精液を飲むとかやり方によって色々違いますよね。各サイトの指し示す言葉ももしかしたら内容が違うかもしれないので、一概に矛盾しているとは言い切れませんよ。また、考えてみれば「0.1%」でも別に確率はゼロではないんだから、「十二分に」可能性があるって言っても決して間違いではないですよね? ここまでくると単なる言葉のあやかもしれませんが、質問者さんにはあまり確率の小さい大きいにはとらわれずに、普段からセーファーセックスを心がけてもらえればと思います。

うーん、今回の回答では「わかりません」とか「かもしれません」とか、ずいぶん歯切れの悪いものになってしまいました。ですが今回頂いた質問は自分だけで判断がつかないものが多く、こればっかりはなんとも答えるのが難しいのですよ。HIV検査については実際に検査した機関に聞くのが一番でしょうし、電話相談で聞いたときの疑問もその窓口に聞くのが一番、ウェブサイトの文章についても、やっぱりそれを書いた人に聞いてみるのが一番だと思うんですよね。きちんとしたところであればちゃんと質問には答えてくれると思いますので、今回のような場合はもっと気軽に検査機関や相談窓口に問い合わせてみてもらえればと思います。あ、もちろん自分で答えられるものだったらこのコーナーへの質問も随時大大大募集中ですよ! 質問お待ちしてますから!

Part2:ポジティブなPositive Lifeのために
〜感染している人にとって必要な情報をコンパクトにまとめて〜
第8回
検査結果の見方 その2
 こんにちは。今月は、現在主流になっている治療の考え方についてお話しします。今までの経緯を振り返りながら、治療がどのように進んできたのか、ご説明します。人に歴史あり、HIVにも歴史あり、です。

■初めは手探りだった
 HIVの治療薬として一番早く出たのが87年のAZT、そして92年のddI、次いで96年のddCです。初めての薬ということで広く受け入れられましたが、投薬すると一時的にはウィルス量が下がっても、しばらくするとウィルスが復活してきて、薬が効かなくなることがほとんどでした。研究の結果、ウィルスが薬にやっつけられないように、自らのRNA(HIVウィルスはDNAの代わりにRNAを持っています)を作り替えて、薬に対して耐性を持つ形に変異しまうことがわかったのです。現在、単剤や2剤で治療することがないのはこのためです。ウィルスを抑えつけるための治療は、こうやって手探りで進んでいきます。

■PIの登場
 従来のNRTI(核酸系逆転写酵素阻害剤)とは別の、新しい作用機序を持つ薬、プロテアーゼ阻害剤(=PI)が出たのが97年のことでした。サキナビルとインジナビルが相次いで承認され、NRTI2種類+PI1種類=3剤での治療がここからスタートしました。

 この組み合わせはウィルスに対しては強い抑制力を持っているのはよかったのですが、どれも飲むのがつらい薬だったのです。インジナビルは「空腹時かつ8時間おきに一日3回」、これは食事と睡眠の時間を全部計算しないと無理です。さらに、腎結石を予防するために1日1.5リットルの水分を取るのでお腹はガボガボです。サキナビルは体への吸収率が悪く、治療成績はあまりよくありませんでした。NFVは必ず食後に飲まなければならず、副作用の下痢はかなりきついと評判でした。APVはどんぐりくらいカプセルが大きくて飲みづらい。これでは薬を飲むだけで疲れてしまいますよね。

 このような状況下で薬を飲み続けることが出来ず、耐性ウィルスが出来てしまい、治療から脱落する人たちが多く出てきてしまいました。ウィルスによく効いても、薬を飲み続けること=アドヒアランスの低い薬では、結局は耐性ウィルスが出現し、治療が難しいことが認識されてきます。「飲めば効くとわかっているのに、なぜ飲めないんだ」という考え方もあったようですが、毎日欠かさず飲むとなるとものには限度があります。アドヒアランスを維持するために、食事や時間などの服薬の制限が少なく、副作用の軽い薬が求められたのです。

■「1日1回4錠」まで進化
  PIの他にNNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害剤)も出た現在では、1日1回、多くて2回の薬を組み合わせて使うのが普通で、3回飲まなくてはならない薬を使うことはかなり少なくなってきました。錠剤の数も、AZTと3TCを合わせたコンビビル、3TCとABCのエプジコム、TDFとFTCのツルバダと、合剤ができてさらに少なくなりました。今の段階で最も楽な組み合わせは1日1回4錠、1日5回18錠の時代からすると隔世の感があります。

 副作用も以前に比べれば多少は軽くなりました。長期間服用したときの副作用は、まだ未知の要素が多々ありますが、わかっている副作用については抑える方法も確立し、無理な場合はその薬を避けて他のものにするだけの選択肢も増えました

 この先、新しい薬が出るまでしばらくはこの状態が続くでしょう。1日1回1錠には当分なりそうもありません。しかし、これくらいなら何とかなりそうな気がしませんか? 毎日歯を磨いてビタミン剤を飲むのと、それほど大きな違いはないように思います。どうでしょうか? 

 次回は現在主流の組み合わせのものを中心に、薬についてお話しします。

今月の薬情報
昔はあんなものを飲んでいた 消えていった薬&その他たち
 以前は用いられることもあったけど、今はもう全然使われなくなった薬やオマケもあります。ここでは抗HIV薬以外のものを紹介しますね。

●ヒドロキシ尿素
もともとは悪性腫瘍や鎌状赤血球性貧血の薬なんだそうですが、ddIの作用をパワーアップさせるとして、その昔使われたことがありました。しかし、臨床試験の結果、差がないことがわかり、さらにddIの副作用である膵炎を起こしやすくするという説もあり、今ではまず使われることはありません。PIが出てくる前、「何か効くものはないか」と必死で探した様子が伝わってきますね。

●カルシウム剤
NFVの副作用であるひどい下痢を緩和するとして用いられていた時代がありました。別に骨が弱くなるとか歯が欠けるとか、そんなこととは全く関係ありません。下痢止めも飲み続けると不快なので、出来るだけナチュラル(?)なもののほうがいいだろう、ということなのでしょう。しかし、これも結局効果なしということで、今では本来の目的以外で処方されることはありません。

●チョコレートシロップ
一時期、リトナビルがカプセルではなく液剤のみだったことがあります。養命酒みたいにちょこちょこ飲むのですが、これがアルコール度数40度! 普通のウォッカと変わりません。なんとかこれを飲めるようにと「まずシロップを口に含んでから舌に触れないように薬を飲む」など、みんなまじめに大議論。今はソフトカプセルが出たのですっかり昔話になりました。保険効いたのかな?
※掲載されている情報は発売当時のものですのでご了承下さい。

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