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「HIV」なんて人ごとさっ! さすがに今どき、そんな風に考える人も少なくなっているとは思うけど、「HIV」についてキチンと理解できているのかな? そして予防するためにどうすればいいのか、本当に分かってるのかな? このコーナーでは、「HIV」の実態を知り、予防していくための方法を考える。
文・溝口哲也
1976年生、現在30才。
昔は性感染症の勉強会やレズビアン&ゲイ映画祭のスタッフでしたが、今ではただの社会人です。HIV関係ではもはやただの素人同然ですが、そのぶん初心に戻ってがんばりたいと思います。

PART1:僕らのとなりの「HIV」
〜今さら聞けない素朴な疑問に答えます!〜

第30回
今さらですが、コンドームをうまくつけてもらう方法は?

イラスト/タカサキケイイチ

Q:「自分はウケなのですが、本当はコンドームをつけてセックスしたいのに、相手から生でしたいと言われるとなかなか断ることができません。上手につけてもらうにはどうしたらいいでしょうか?」(神奈川県/大石・21)

 本当はコンドームをつけてほしいのに断れない、そういうことってあるみたいですね。僕は昔々セーファーセックスの勉強会みたいなイベントのスタッフをやったことがあって、そこでも参加者の方から何度かそういった話を聞いたことがありました。自分は好きなことを気ままにやりたい末っ子タイプな性格なので今までそういった経験はありませんでしたが、衝突を避けたいのか嫌われたくないのか、なかなかズバッと「NO!」と言うのがむつかしい人もいるみたいですね。みんな性格がやさしいのかな?
 大石君がどんな状況で相手を断れなかったのかはよくわからないので、以下、出会い方別にコンドームを使ってもらうパターンをいろいろと考えてみましたよ。大石君に当てはまる部分があるかどうかはわからないけど、参考になればうれしいです。

●出会い系サイト
 プロフを載せたり画像交換したり、事前にやりとりして会う場合だったら、メールの段階からコンドームを使ってほしいことを伝えておくと気が楽です。サイトにプロフを載せる時点で「セーフで」、なんて書いてる人もいますしね。早め早めに伝えてお
いて、もしダメだったらあきらめてサクッとほかの人を探しましょう。

●ハッテン場
 こういうところって、普通は会話せずに無言でやり始めることが多いから、こちらも無言で事を進めてもいいんじゃないですかねー。場の雰囲気が温まってきたら、無言でコンドームを相手につけるとか(相手に「渡す」んじゃないところがポイント)。もし相手がつけるのを嫌がったら「あっ、ごめんね」とか適当に言って、そのままさっと離れてほかの人を探しましょう。
 株とか投資の世界では「損切り」とか言いますけど、男なんてたくさんいるんだから、深追いしてめんどくさいことになるよりは早め早めに見切ってサッサと次を探すのが、良いセックスへの近道だと僕個人的には思います(セーファーセックスの話なのに、なぜか自分の殺伐とした恋愛感も晒してしまったような…)。

●飲み屋・クラブ
 ヤリがメインの目的とは違って事前に会話ができる場だと、会話で主導権が握れます。「これからセックス」なムードになったら、まず最初に言うべき言葉は「コンドームとか持ってる?」、です。これを言えば相手にもコンドームつけたいんだなってことがわかりますし、相手のリアクション次第では「んじゃコンビニかどっかで買ってく?」とか次の手が打てます(間を空けず、さらっと続けるのがポイント)。自分の経験上、ここで「いや、コンドームはつけずに生でやりたい」とか言ってくるようなツワモノは、そういないんじゃないかなあ。でもまあ万が一ここで相手が何を言ってきたとしても、まだまだ自分のチンコは冷静なはず。相手と自分の希望がどうしても折り合いつかなかった場合は、そうなんだー、あ、メール来ちゃったちょっと待ってね、とかなんとか言って、徐々にセックスする雰囲気自体をゴマカシて無かったことにしちゃってもいいかもしれません。一番まずいと思うのは、こういう話を一切しないままに、相手の家に行ってセックスを始めてイザ挿入! ってタイミングで、相手から無言で生で入れられそうになるとき。ここまでいくと自分も相手も気分が盛り上がっちゃってるし、うまいことセーファーセックスに持っていくのはむつかしいかもですね。

 今回いろいろ書いてみて改めて思いましたが、重要なのは、早めに自分の意思を相手に伝えるということ。早い段階だったら「セックスしない」という選択肢もとれるわけだし、ちょっとだけがんばって自分で場をリードする意識を持ってみると、うまいこと話が運べるかと思います。大石君も最初はなかなか慣れないかもしれないけど、ぜひがんばってみてくださいね。

Part2:ポジティブなPositive Lifeのために
〜感染している人にとって必要な情報をコンパクトにまとめて〜
第15回
情報収集の考え方
 こんにちは。今まで、何度も「昔はこんな治療をしていた」ということをお話ししました。どんどん変化している治療法をどこまで追いかけるか、情報収集について、今月はお話ししましょう。

■日進月歩の世界
 この連載を読んでくださっているみなさんは既にご存じだと思いますが、以前、抗HIV薬がAZTしかなかった時代は、それ一つで治療を進めてきました。3剤併用が基本の今となっては問題外の治療法ですが、当時はそれが最新でかつ唯一の方法だったのです。

 HIVは結核や肝炎などと比べ、まだまだ歴史の浅い感染症です。よくわかっていないこともまだまだたくさんあります。薬も新しいものがどんどん開発され、治療法もめまぐるしく変わります。以前は当たり前だった知識が数年たてばもう時代遅れになってしまうことも多々あります。

■どこまで追っかければいいの?
 この連載で、自分で考えて治療を選択することの大切さを幾度もお話ししてきましたが、その選択の判断材料になる情報は、右に書いたようにどんどん変化します。古い情報を元に判断しては、悪い結果を招きかねません。情報収集がこの病気とつき合っていくのに非常に重要な役割を果たしていることは、もうご存じだと思います。

 では、年がら年中HIVの治療法を追っかけていなくてはならないのでしょうか? ウィルスの最新情報まで把握していないといけないのでしょうか? もちろんそれができればベストでしょうが、とても万人に勧められる方法ではありません。HIVは長くつき合っていかなければならない病気です。そんなことでは途中で息切れしてしまいますし、精神衛生上もよくありません。

■情報の分類:病気とその治療法

 ここで、情報を2つに大きく分けてみましょう。HIV感染症という病気に関するものと、その治療法に関するものです。

 病気に関する情報は、もちろん今も研究が進んでいて、新しい知見がもたらされていますが、例えばウィルスはTリンパ球(=CD4)に感染するとか、体液にウィルスが含まれているとか、基本的な点について今までの知識が根底からひっくり返るような新事実が出てくる可能性は低いと思われます。このような病気そのものに関する知識は、感染がわかったときに押さえておいた方がいいでしょう。「HIVにかかったらすぐ死ぬんだ」なんて誤解はすぐに解いた方が今後の生活のために大切です。

 治療法に関する情報は、新しい薬が出るたびに変更され、以前出た薬についても新しい情報が随時追加されていきます。このように日々更新されていくものは、その情報が必要とされるとき、すなわち治療を開始するとき、もしくは変更するときにきちんと押さえることが最低限のハードルをクリアする条件になるでしょう。逆に言えば、CD4が高く状態が安定していて治療開始が視野に入っていない段階で情報収集しても、それが実際に治療を開始する時点で有効かどうかはわからないのです。だったら、その情報が必要になった時点で最新のものを集めればよい、と考えることができます。

■情報の鮮度と量

 とはいうものの、治療に関する情報が必要になった時点であわてて情報を集めるのも簡単ではありません。情報収集は一つの技術ですから、慣れていない人はなかなかうまくできないものです。であれば、感染者の友人から話を聞くとか、病院においてあるパンフレットをとりあえず読んでおくとか、日頃から情報を蓄積しておいて、いざ必要なときにそれらを新しい情報と照らし合わせて判断の材料にするのが最も現実的でしょう。

 情報に踊らされることなく、かつ情報収集に焦ることなく、十全な治療生活を送るためには、情報とのつきあい方もポイントの一つになってくることがおわかり頂けたと思います。それではまた来月。

今月の薬情報
インテグラーゼ阻害剤
 いま使われている薬は逆転写酵素とプロテアーゼという酵素を阻害する薬がメインです。ウィルスのリンパ球への侵入を防ぐ薬もありますが、評判は今ひとつ。そもそも日本では承認されていませんし。ということで、全く新しいタイプの薬が求められているわけですが、久しぶりに有望株が現れました。ウィルスのRNAがリンパ球のDNAに組み込まれる時に使われるインテグラーゼという酵素を阻害する薬が2つ(うち1つは日本たばこ(JT)が開発)、いま臨床試験段階まで進んでいます。

 プロテアーゼや逆転写酵素は比較的簡単な構造をしていますが、このインテグラーゼという酵素は構造が複雑なので、今まではこの酵素をブロックする薬品を設計するのは難しいとされてきました。その技術的な問題点が解決できれば薬の種類も増え、より治療も強力になるものと期待されます。ただ、この薬もウィルスを直接殺すわけではないので、完治するのはちょっと無理そう。うーん。
※掲載されている情報は発売当時のものですのでご了承下さい。
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