男女郎苦界草子
銀の華単行本化記念企画

田亀源五郎渾身の野郎責め絵巻。その世界を探る!
-後編-

約800ページ以上に渡る壮大な長編SM劇画
田亀源五郎作『銀の華』は、雑誌『バディ』にて1994年7月号から1999年2月号までの、約4年半に渡って連載された長編劇画である。舞台は明治時代の浅草新吉原、遊郭「金華楼」に男女郎として身売りされた、主人公・銀次郎は、様々な男達との性の交わりと、淫靡かつ凄惨な責め苦によって、身も心も女郎に落とされていく……。20世紀ゲイコミックの金字塔的作品と呼ぶにふさわしい、この『銀の華』の世界に触れてみよう。

作者田亀源五郎「銀の華」を語る
後編
Q:本誌でのイラストや漫画作品同様に、この作品でもかなり痛そうな責めの場面が多いのですが、「これじゃ読者が引くかな?」と想定して描かれているんでしょうか?

「いいえ。「引くんなら引け!」って感じで(笑)。正直言うと、私としてはまだ生ヌルいんです。さすがに、手足ちょんぎり系とか、人間食べる系とかは、読者がついてこれないかなって思って遠慮してますけど、釘刺して針刺すぐらいがナンボのもんじゃいと(笑)」

Q:この時代ならではの責めも多いですが、資料に基づいたものなのでしょうか? それとも性欲的な発想から?

「うーん。資料で知ったから出さなきゃっていうのもありますけど、ほとんど性欲です。あとはアレンジ。例えば筆に辛子を塗って…ていうシーン(※1)がありますよね。あれは、女のSが男のペニスを綿棒にメンソレータムを塗って、尿道にずぼずぼ入れるプレイの話を知って、面白いと思ったんだけど、明治の日本にメンソレータムと綿棒はなさそうなんで、「じゃあ辛子と筆だ!」って(笑)。フィスト(※2)なんかもそうですね。」
※1
第37話 金華楼の得意客の少年に、尿道に辛子を塗った筆を差し込まれる責めを受ける。
Q:この「銀の華」を描く上でどうしても外せなかったエピソードや表現したかったテーマとはどんなものなのでしょうか?

「全ての作品に共通して言えることなんですが、理性は肉体に従うんですよ。いくら頭で考えたって、カラダで感じてしまったことにはたちうちできない。それを理性を押さえ付けるのではなく、それによって理性が変わっていくべきだと思うんです。この「銀の華」や「PRIDE」ではそれがハッキリと出てますね。第一にアナルセックスの快感とSM的な状況でも勃起するっていうのと、次に精神的な部分での刺激、愛するとか愛されるという部分が加わると、どう変わっていくのか? という部分ですね。だから銀が常とのセックスでトコロテンするというエピソード(※3)が、大きなポイントなんですよ」

Q:最後に、田亀源五郎にとっての「良い絵」、また、作家としての信念とはどんなものなのでしょうか?

「ムチャクチャ上手い必要はないけど、下手すぎないってこと。あと魂が抜けていない。百点満点の実力を持っている人が、流して70点で描いた絵よりも、30点の実力しかない人が、がんばって40点になるまで描いた絵の方が100倍も好きなんです。あと、記号表現のマンネリズムに陥ることはすごく警戒しています。常に自分の描く絵には疑問を持っているようにして、もっと良い描き方があるんじゃないか、もっとふさわしい道があるんじゃないかってことは、絶えず意識するようにしています。今の絵には満足したくないですね」
※2
第37話 金華楼の得意客の少年の下男に、腕を入れられる。
この「銀の華」には、責め場・濡れ場の男絵としてのエロチシズムはもちろん、すれ違う人間同士の心理描写もドラマチックかつ魅力的に描かれている。作家・田亀源五郎の信念と想いの全てが注ぎ込まれたこの作品が、一人でも多くの人の目に触れることを願わずにはいられない。
※3
第35話 常が銀の濃厚なアナルセックスシーン。大胆に見開き2ページで掲載された。

登場人物こぼれ話
玉菊 旦那
ゲイコミックで最も、画、内面共に綿密に描かれた女性。銀と結婚の契りを交わした許嫁。

「ちなみにイメージしたのは、藤あや子なんですけど(笑)。ちょっと安くて色っぽくて芯が強そうな感じで」
序盤は素上不明の銀の得意客として登場。作品終盤で憲兵の制服姿で現れる。

「ウチのダンナに手伝ってもらいまして、私が標準語で書いたものを島原弁に訳してもらったんです」

「銀の華」上・中・下巻 絶賛発売中!